黒と白の鼠
![](https://houonji.org/wp-content/uploads/2019/10/IMGP2623-1450x930.jpg)
本堂の壁には、お経の一節が描かれております。
昔ある所に一人の旅人がおりました。
旅人が広野を歩いていると一頭の象が現れます。
その象は背中に火が点いた暴れ象で、旅人めがけて突進してきます。
慌てて逃げ出した旅人は、崖上の木から根が伸びているのを見つけ、
その根にしがみつきます。
ほっと一息ついて上を見上げると、黒と白の鼠が二匹、木の根元をかじっている事に気付きます。
また慌てた旅人は根を下がろうと下を見ると、そこには恐ろしい龍がおりました。
上にも下にも行けず、その場に立ち止まっていると更に四匹の蛇が現れます。
旅人は恐怖のあまり身震いをしました。
すると上から甘い蜜が垂れてきて、ちょうど旅人の口におちました。
上を見上げると木にミツバチの巣がある事が分かりました。
根が切れてしまいそうになるのは分かっていながら、蜜をなめたい一心で、
旅人は根を揺らし蜜を五度なめました。
広野は迷い。象は無常。木の根は寿命。黒白の二匹の鼠は夜と昼。
二匹の鼠が根をかじるのは、命が徐々に終わりに近づいていることを示しています。
四匹の蛇は地・水・火・風の四大。
五滴の蜜は色・声・香・味・所触の五欲。
そして龍は死を喩えています。
この絵は、お釈迦さまが説かれた「譬喩経」(ひゆきょう)の一節、
「黒と白の鼠」を基に描かれております。
人の一生は常に死に近づいていくのに、そこに気付かず欲望のままに生きる。
人間とはそんな愚かなものだよ。
お釈迦さまはそう説かれたのです。
このお経に浄土宗の教えを私なりに加え鑑みると、
この世で一遍でも心から「ナムアミダブツ」とお念仏を称えた者は
命が尽きた後、極楽浄土に往生する事ができる。
だから、生き死にの事は仏さま(阿弥陀如来)に任せて、
今を一生懸命に生きましょう。
煩悩を断ち切るのではなく、それを受け入れ、
常に懺悔の心を忘れず、謙虚に前向きに生きていこう。
「黒と白の鼠」
この絵を見る度に私は「よし、がんばろう!」
そんな気持ちになります。
2019.10.1
わげんせ和玄
![](https://houonji.org/wp-content/uploads/2019/10/IMGP2602-1024x768.jpg)
広野は迷い。象は無常。木の根は寿命。 黒白の二匹の鼠は夜と昼。 四匹の蛇は地・水・火・風の四大。 五滴の蜜は色・声・香・味・所触の五欲。 そして龍は死を喩えています。
![](https://houonji.org/wp-content/uploads/2019/10/IMGP2619-768x1024.jpg)
生き死にの事は仏さまにお任せして、今を一生懸命生きましょう。
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