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黒と白の鼠

本堂の壁には、お経の一節が描かれております。

昔ある所に一人の旅人がおりました。
旅人が広野を歩いていると一頭の象が現れます。
その象は背中に火が点いた暴れ象で、旅人めがけて突進してきます。
慌てて逃げ出した旅人は、崖上の木から根が伸びているのを見つけ、
その根にしがみつきます。
ほっと一息ついて上を見上げると、黒と白の鼠が二匹、木の根元をかじっている事に気付きます。
また慌てた旅人は根を下がろうと下を見ると、そこには恐ろしい龍がおりました。
上にも下にも行けず、その場に立ち止まっていると更に四匹の蛇が現れます。
旅人は恐怖のあまり身震いをしました。
すると上から甘い蜜が垂れてきて、ちょうど旅人の口におちました。
上を見上げると木にミツバチの巣がある事が分かりました。
根が切れてしまいそうになるのは分かっていながら、蜜をなめたい一心で、
旅人は根を揺らし蜜を五度なめました。

広野は迷い。象は無常。木の根は寿命。黒白の二匹の鼠は夜と昼。
二匹の鼠が根をかじるのは、命が徐々に終わりに近づいていることを示しています。
四匹の蛇は地・水・火・風の四大。
五滴の蜜は色・声・香・味・所触の五欲。
そして龍は死を喩えています。

この絵は、お釈迦さまが説かれた「譬喩経」(ひゆきょう)の一節、
「黒と白の鼠」を基に描かれております。

人の一生は常に死に近づいていくのに、そこに気付かず欲望のままに生きる。
人間とはそんな愚かなものだよ。
お釈迦さまはそう説かれたのです。

このお経に浄土宗の教えを私なりに加え鑑みると、

この世で一遍でも心から「ナムアミダブツ」とお念仏を称えた者は
命が尽きた後、極楽浄土に往生する事ができる。
だから、生き死にの事は仏さま(阿弥陀如来)に任せて、
今を一生懸命に生きましょう。
煩悩を断ち切るのではなく、それを受け入れ、
常に懺悔の心を忘れず、謙虚に前向きに生きていこう。

「黒と白の鼠」
この絵を見る度に私は「よし、がんばろう!」
そんな気持ちになります。

2019.10.1
わげんせ和玄

広野は迷い。象は無常。木の根は寿命。 黒白の二匹の鼠は夜と昼。 四匹の蛇は地・水・火・風の四大。 五滴の蜜は色・声・香・味・所触の五欲。 そして龍は死を喩えています。

生き死にの事は仏さまにお任せして、今を一生懸命生きましょう。

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